2nd:1話 山賊の噂

ロリクステッド、厳しいスカイリムの環境のなかで、豊かな作物が育つ奇跡の土地
しかし、本当のところは、この土地に住む勤勉な民のおかげである。

内戦にドラゴン、脅威に見舞われる中、謎の山賊の噂が蔓延していた—-

 

リュシアン「はあ、結構歩いたな…」

 

エリク「リュシアンさんもう少しですよ」

「というか、今更ですけどー…」

 

「ずいぶん無茶してませんか?」

 

リュシアン「た、多少は無理しているが、もうすぐ着く、問題ない」

 

エリク「それにしても、山賊なんて出ませんでしたね、せっかく父さんにリュシアンさんと一緒なら外へ出てもいいって言われたのに、少しくらい剣を使ってみたかったなあ」

 

「何を言っている、出ないに越したことは無いだろう、ほら、支えてくれ、縄が緩んできた」

「だって、丸太を一人で運ぶ男を誰が襲うんですか、俺なら逃げますよ」

 

「いいか?エリク、護衛はただ、歩いて着いてくる仕事じゃないんだぞ」

 

「もし、私があの岩陰から、弓を射られたりしたら?」

「あ…」

 

「必ずしも力があれば勝てるわけじゃない」

 

「油断は禁物だ、冒険者になりたいなら、まだまだ修行が必要だな」

 

「はあい…」

 

「よし、もうロリクステッドだ!油断せずに!最後までがんばるぞ」

 

 

「よいしょ、よいしょ」

 

サーシャ「今日も大物が捕れたわね」

 

「!!」

 

「ワン!ワンワン!」
「セオ君?」

 

「あれは…」

 

「リュシアン!」

 

「とうっ!」

 

 

「リュシアンさん慎重に!そろそろ縄が危ないかも、気をつけてください」

「わかった…もうすぐだ、慎重に行こう、慎重に…」

 

「ってあれ」

 

「どうした?」
「リュシアンーー!!」

 

「おかえりーーー!!」

 


「サーシャさん!?」

 

「サ、サーシャ!!」
「うわっ」

 

「屋根に登るなと言っただ…」

 

「リュシアンさん縄が!!」

 

ブチン!

 

「え」

 

ガラガラガッシャーーン!!
「うわあああああああ!!」

 

 

 

「よし!」

 

ジュアン「たいした怪我ではないな。これで大丈夫だ」

 

サーシャ「よかった」
リュシアン「ありがとうございます」

 

ジュアン「エリクにも怪我が無くてよかったよ」

エリク「ええ!リュシアンさん、”油断”しましたね」

リュシアン「む……」

 

レルディス「全く、リバーウッドから丸太を運ぶなんて狂気の沙汰ね、馬車は出ていなかったの?」
エリク「それが…」

 

「最近、治安が悪いから、運搬料金を普段の倍以上に上げると言われてしまって」

 

リュシアン「それで、仕方なく、運べる量まで減らしてもってきたんだ」
レルディス(普通は丸太一本でも運べないと思うけどね…)

 

ジュアン「ドラゴンブリッジの道がもっと安全なら近かったのだがなあ」

 

「………。」

 

「そうだ!もう一度、ホワイトランへ行って、衛兵を増やしてもらうか、村に壁を作ってもらうか頼みましょうよ!」

 

エニス「その件なら、何度も打診しているさ」

 

「内戦とドラゴン騒ぎで衛兵不足が深刻なんだと、手配は少なくともひと月はかかるらしい。」

「ひと月!?」

 

ロリク「まったく、本当に居るかも分からないドラゴンなんぞより、山賊問題を先になんとかしてほしいものだ」

 

エリク「あーあ、これじゃあいつまでたっても冒険に出られない!」
ムラルキ「エリク!!」

 

ムラルキ「馬鹿なことを言ってるんじゃない!こっちも手伝ってくれ」

 

「げげっ父さん」

 

ジュアン「それじゃあ、そろそろ帰るよ。リュシアン君、お大事に。」
リュシアン「ありがとうございました。」

 

レルディス「私たちも帰るわね、それじゃ、気をつけなさいねリュシアンくん、おやすみサーシャちゃん」
リュシアン「は、はい…」
サーシャ「おやすみなさい!」

 

サーシャ「リュシアン、ごめんね、私が驚かせちゃったから」

 

「いや、サーシャのせいではない、私が無理をしたのが良くなかったな。」

 

「でも!屋根のぼりは危ないからだめだぞ」
「はあい…」

 

「ん?」

 

「どうしたの?」

 

「ドアの前に置いておいたスプーンが」

 

「動いている」

「あら、ほんと」

 

「サーシャ、一旦家に帰ったのか?」
「ううん。私まだ空けてないわよ」

 

「誰だ!泥棒!」

 

「ん」

 

「すーすー」

 

「アー君!」

 

「アーセラン!!」
「うげっ」

 

アーセラン「う、うーんなんだぁ?やっと帰ってきたのか…」
「なんだあ?じゃない、どうしてここに居る!」

 

「なんだよ、こないだ約束しただろ”今度”遊びに行くって…」
「今度というのが今日とは聞いてないぞ」

 

「第一、鍵を勝手に開けるんじゃないって前も言った…」

 

「スキーヴァー!?」
「あだっ!!」

 

「イテテ、まだ紹介してなかったな」

 

「この前のホニングブリューの地下にいた天才のスキーヴァーさ、俺の新しい相棒もとい、護衛役だ。」

 

「わあ、かわいいー!このお洋服はアー君が作ったの?」

「へっへーそうなんだ綺麗にしてやればかわいいもんだろ?」

「アー君って結構器用なのね!」

「ちょ、ちょっとまて!!」

 

「スキーヴァーまで勝手に入れたのか!?大丈夫なのかその、病気とか…」

 

「綺麗にしてやったし、薬も与えた、躾けもバッチリだからその点は大丈夫さ、それに」

 

「すっげー暖かいんだぜ、ほら、今夜貸してやろうか?」
「遠慮する。」

 

 

 

「はい、こっちはアー君用ね」

「いやあー!わりいなあ夕食までご馳走になっちまって!」

「いいのいいの、遠慮なく食べてってね」

 

「お!いい赤身だな、そんじゃ、遠慮なくいただきまあす!」
(最初から夕飯狙いだな…)

 

「アー君、商売は順調?」

「ああ、スキーヴァーレースの件はまだまだだけど、鹿肉自体はホニングブリューへ置いてもらってから、好調だぜ!サーシャさんの鹿肉はいい品質だからな!」

 

「ただ、知名度がホワイトラン止まりなんだよなあ…もっと他の街へ行って営業したいところなんだけど、例の噂で馬車が全然出てなくてさ」

 

「私もさっき馬車が出ていないせいで丸太を自力で運んできたところだ。」

「ま、丸太を自力で…」

 

「お前は山賊の噂、どう思う」

 

「先週もこのあたりで行商人がやられたらしいな、死者は2人、行方不明者は4人か、」

「不気味ね…」

「目撃者もいないとは気味が悪い、新手の奴隷商人だろうか」

 

「うーん、確かにうまく逃げてるみてえだが、奴隷商人にしてはやりかたが派手すぎるしプロの仕事じゃないな。」

 

「アー君は一人で大丈夫なの?」

 

「ああ、大丈夫、大丈夫!音を立てないヴァレンウッドの山賊ほど怖くないぜ。事が大きくなれば、ホワイトランの首長も動くだろ、そうなりゃすぐ捕まるって!」

「そ、そうよね…」

 

「あ、あのさ、それで…話は戻るけど、鹿肉の在庫…そのー、もうちょっと増やせねえかなって思って」

 

「あ!今でも結構手一杯なのは分かってるぜ!でも、もうちょっとだけ…」

 

「うふふ!」

 

「アー君!実はね、明日そのための秘密兵器を作るのよ!」

 

「秘密兵器?」

「秘密兵器は言いすぎだぞサーシャ」

「家の裏に鹿肉加工用の作業小屋を建てようと思ってな、もう土台は出来ているんだ」

 

「おお!いいアイディアだな!なるほど、そのための小屋だったのか」

 

「なら、もうちょっと屋根が高いほうが良くないか?あれだと大きな鹿をつるしたときに地面に着いちまうかも」

「なんだ、そのまるで知っているような口ぶりは」

 

「だって机に設計図が」
「だから人ん家を勝手に漁るんじゃない!!」

 

 

 


「すーすー…」

 

「お前いつも寝る前に飲んでるのか?」

 

「サーシャは平気みたいだが、こうもしないと寒くて眠れなくてな。お前も飲むか?」

 

「それならハチミツ酒よりもっといいのがあるぜ」

 

「じゃーん!」

 

「あ!まさか、ジャッガかっ…てああ!?」

「大正解!」

「ほら、特別にお前にもやるよ。いいから飲んでみなって!うまいぜ」

 

(乳白色だな、一体なんの色なんだ…)

 

 「おいおい失礼だなあ!アルトマーはボズマーの飯見るといつもそういう顔しやがる。
ジャッガてのはあ、豚の乳を手間隙かけて3週間ほど醗酵させた一般的な酒だよ」

(豚の乳を3週間醗酵…!?)

 

(うっ…確かに豚の腐ったような匂い…いや、食わず…飲まず嫌いは損だな、味が重要だ)

 

(めったに飲めるものでもないだろう…!)

 

「あ、それすげえ強いから気をつけろよ」

 

「んぐふ!?げほっげほっ!」

「おいおい、大丈夫か?一気に飲むやつがいるかよ」

「さ、先に言え!しかし…」

 

「酸味が強いが、甘くてクリームのようなコクもあって」

 

「意外とイケるな。」

「だろ!!」

 

「ここのブランドは貴族御用達の高級品なんだ、
まあ、ここだけの話、醸造所に貸しのある奴が居るおかげで大分安く手に入ったけどな。」

(きっと脅したんだろうな)

 

「しっかし、俺がヴァレンウッドを出てすぐに注文したのに、今届くなんて。ここはずいぶん遠いんだな」

「ふふ、故郷が懐かしくなったか?」

 

「いや、まさか。酒や食いもんは好きだけど、もう戻るつもりはねえ」

「ほう、前から思っていたが、随分と故郷を嫌っているみたいだな」

「………」

 

「なあ、ボズマーと言えば、生まれつきの弓の達人で、物心がつく前から弓を持つ、なんてイメージがあるよな?」

「え?ああ、だが全員がそういうわけでもないのだろう」

「もちろん、街のボズマーは弓を持ったこともない奴もいる。」

 

「けど俺の村はイメージそのまんまだ」

 

「ボズマーにしては珍しい閉鎖的で好戦的な戦闘部族でね。おまけに数百年ほど隣村のウッドオークと木を守るために小競り合いをやってる。戦い勝つことが村の価値なんだ。」

 

「まあ、そんなわけで俺みたいなのには最高に居心地が悪くてさ。」

「戦闘部族!?それは初耳だな」

 

「本当はもっと早く村を出るつもりだった…!」

 

「で、でもよ!商人になりたいって言ったって、村の奴らは誰も支援なんかしてくれねえ。しかたねえから、地道に肉を売りながら商売資金を貯めてたんだ」

 

「どうだ?思ったより健気にがんばってたんだぜ!」

 

「確かに…思っていたより立派だな、苦労しただろう」

 

「お、おい、まじめに答えるなよ!ったくこれだからアルトマーは。」

 

「明日は小屋作るんだろ、手伝ってやるよ」

 

「そんじゃ、おやすみ」

 

「ああ」

 

      

「やっと小屋の形になってきたな」

 

「俺が手伝ったったお陰だな!そろそろ休憩にしようぜ」

 

「そうね、おなかすいちゃった!キノコ鍋があるわよ!」

 

「リュシアンさーん!!」
「ん?」

 

「おーい!」

 

「エリク!どうしたんだ?」

 

「リュシアンさん!ついに…ホワイトランからロリクステッドの壁の建設の命令が出たそうですよ!」

 

「なに!?」

 

「首長もとうとう動いたか、これなら私の木も一緒に運んでもらえばよかったな」

 

エリク「村の周りに簡易的な壁を作ってくれるそうですよ、見張り台も作るらしいから山賊避けにはもってこいですね!」

アーセラン「へえ、確かにこの村は見晴らしが良すぎるもんな」

 

「………」

「サーシャ?どうした」

 

「ううん、私、この風景が好きだったから、ちょっと残念だなって…」

 

「仕方ない、こういうご時勢だ、早く治安が戻るといいな」

 

 

 

 

「アーくん本当に帰るの?今日も泊まっていけばいいのに」

「ああ、せめて明日の朝帰ったほうがいいぞ」

 

「いや、もうホワイトランで宿取っちまったし、今帰れば日が落ちる前には着くさ」

 

「明日、朝一番にカジートキャラバンが移動するらしいから、跡地で(勝手に)露天出してみようかと思ってね」

 

「でも…」

 

「大丈夫!大丈夫!小さいけど護衛もいるし。」

 

「そ、そうか…くれぐれも気をつけろよ、また出来たら鹿肉を持っていくからな」

 

「ああ、よろしくな!じゃ、また”今度”遊びに行くからな!」

 

「アー君!きをつけてね!」

 

「全く、落ち着きのないやつだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほとんど完成だな、すごいスピードだ。」

 

「リュシアン!こっちも完成よ!」

 

「じゃーん!」

 

「おお!たくさん出来たな、これならアイツもしばらくは満足するだろう」

 

「この小屋のおかげね…」

 

「それにしても、アー君、あれから大丈夫かしら、なんだか不安で」

 

「あの日以来商人が襲われたという噂は聞かないから無事だとは思うが…
早速、肉を届けに行ってやらないとな」

 

「アーセラン!肉を持ってきたぞー!」

 

エリク「あれ?」

 

「いませんね…」

「おかしいな、今日は別のところでやっているのだろうか」

 

サビョルン「ああ!あんたか!あいつ…アーセランに会ったか!?」

 

「サビョルン!いや、一週間ほど前に会ったきりだが」

 

「そ、そうか…そうだな…えーと、落ち着いて聞いてくれ」

 

「!!まさか…何かあったのか!?」

 

「…あいつ、昨日捕まったんだ」

 

「なっ」

 

「何だって!?」

 

「まだ誰も助けに行っていないのか、山賊はいくら出せと要求してきた!?」

 

「ちょ、ちょっと、山賊じゃあない、捕まったんだ!ホワイトランの牢獄に!」

「え?」

 

「衛兵を殺した殺人罪でな。」

 

「は?」

「それで…」

 

「昨日脱獄したらしいんだ」

 

「え」

「ちょっと…」

 

「意味がわからないんだが。」

 

つづく

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コメント

  1. アバター 不死身のモロヘイヤ より:

    ほんわかムードからの怒涛の展開!
    小屋建設の時のリュシアンさんとアー君の丸太運び(運べてない)のシーン凄く好きです。

    次回は脱獄王アー君のお話ですかね!
    ゆっくり楽しみにお待ちしてますので、どうぞ暫し快適なESOライフを(笑)

    • アバター kuromimi より:

      コメントありがとうございます!またもやスパムがかかっておりまして失礼しました;
      アーセランが運べてないシーンは小屋建設中SSで一番やりたかったところでしたw
      脱獄王アーセラン別のシリーズが始まってしまいそうですwESOとほどほどに両立しつつがんばりますね!w

  2. アバター 坂田 より:

    すげえ・・・どうなってるんですかねこれは
    kuromimiさんのとこのSSはオブジェクトなんかも一枚一枚凝ってて本当に凄いですわ

    ストーリーの方も先が気になりますね、俺のアーセラン君は大丈夫なの・・・♂

    • アバター kuromimi より:

      ありがとございます!!オブジェクトばかりで大分時間かかりました;Jaxonz Positionerさまさまです。SKTさんのアーセランはたぶん大丈夫ですよ……(?)♂

  3. ( °o°)ノ すごい! 圧倒的なボリュームでした!
    アーセランくんの旅に出た背景が分かって、読み込んじゃいました。うちの彼の設定と殆ど外れてなくって良かったw
    薪とか、小屋建てとか、どのSS一つ取っても、手間かけてるのが分かって、ただただ感心してみさせて頂きました。相当時間掛かったんだろうな~って。
    先も気になる展開で読みたい気持ちは山々ですが、お体大事で頑張って下さいヾ(๑╹◡╹)ノ”

    P.S.そういえばミランくんはまだだったんですね

    • アバター kuromimi より:

      ありがとうございます!今まで言っていなかったアーセランの設定なんかを盛り込んでみました、もきゅさんが考えてくださっていた設定と外れなくてよかったですwやりたいなあと思ったシーンがことごとくオブジェクトやCKを要するものになってしまって大変でしたがとりあえず、はじめの一話分完成してよかったです!続きはもう少し早いペースでがんばりますw
      (ミラン君は次回あたりで考えております~!)

  4. アバター 鋼鉄蒸気 より:

    これは…相変わらず凄い芸コマなSS群で参考になります。
    オブジェクト含めたポーズを作れるのは憧れですねぇ。
    読みやすく状況もわかりやすくてとても読みやすい割に読みごたえもあって素薔薇しいです。

    しかし、こりお話の急転直下具合、これは更新頻度を高めてもらわねばww

    • アバター kuromimi より:

      ありがとうございます!今回もオブジェクトやらSSだらけになってしまいましたが、単純で読みやすいものを目指していますのでそういって頂けるとうれしいです!いろんな案を考えたりしているうちに二進も三進もいかない状態になったりとスタートがかなりひっかかっていたので、次回は流石にもう少し早く更新できるといいですw

  5. アバター Aroetty より:

    更新お疲れ様です!!くろみみさんのお話って日常の中にワクワクが詰まったドラマで大好きです。
    SSも漫画みたいにスッと入ってきて……次回が気になるううう!!
    あとジャッガ呑んじゃうリュシアンさんが素敵です……(絶対ヤダ

    • アバター kuromimi より:

      ありがとうございます!!
      完全なヒーローでなく村人Aみたいな人々にもドラマってあるよね、と思って書いています!(事件には巻き込まれますがw)読みやすさを重点においているのでそう言っていただけて良かったです!ジャッガは馬乳酒みたいな感じなのかなあと勝手に想像してみましたが、リュシアンは脳筋なので意外とチャレンジャーですね、私も飲みたくないですwコメントありがとうございました!ヽ(*´ω`*)

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